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複数分子イメージング研究チーム[Multiple Molecular Imaging Research Laboratory] チームリーダー:榎本 秀一
概略
研究内容
研究業績
研究スタッフ

研究内容
複数分子イメージング研究チームでは、(1)種々の加速器を使った放射性同位元素(マルチトレーサー、シングルトレーサー)製造とさまざまな応用研究、(2)複数分子同時イメージング装置の開発と新分子イメージングモダリティーの創出、(3)複数分子同時イメージング用新プローブの創薬研究、(4)これらのツールを用いた生体微量元素の分子生物学的、代謝生理学的探究などが主なテーマです。当研究ユニットには、医学、薬学、栄養学などの研究者とともに、化学、物理学を専門とする研究者も参画し、メタロミクス研究(生体金属関連反応の科学)という新たな研究分野で、基礎科学から臨床応用にまで繋がる研究を推進しています。



本研究チームは、コンプトンカメラの原理を電極分割型ゲルマニウム半導体検出器に応用した新しいガンマ線イメージング装置、GREI(Gamma-Ray Emission Imaging)の開発を行っています。私たちはGREIによって生体での複数分子同時ガンマ線イメージングに世界で初めて成功し、GREIが生体微量元素の分子生物学的、代謝生理学的研究など、ライフサイエンス分野の研究に有用であることを証明してきました。
GREIが実現する複数分子同時イメージングは、がんや生活習慣病など難治療性疾患の早期診断、移植・再生医療の効果判定などの臨床現場における重要な診断基準のモニタリングに有用なツールになると考えています。現在、より高感度・高解像度化のための開発と複数分子同時イメージング用新プローブの創薬を行っており、近い将来、臨床現場で活用できる日本発の次世代画像診断装置を目指しています。

【複数分子同時イメージング法の開発】

がんやさまざまな生活習慣病などの疾病には、複数の要因が複合的に関与していることが明らかになっており、複数の生体関連分子の情報を同時に分析することで、より高度で正確な診断が可能になると考えられます。しかしながら、PETを用いた分子イメージングでは、その原理上、二つ以上の分子の動きを同時追跡することはできませんでした。またSPECTは、低エネルギーのγ線撮像しかできないため、使用できる核種に制限がありました。理化学研究所が現在実用化に向けて開発を進めている半導体コンプトンカメラ“GREI(Gamma-Ray Emission Imaging)”(図1)は、既存の画像診断装置に比べて撮像可能なγ線のエネルギー範囲が格段に広く、異なるエネルギーのγ線による同時撮像が可能です(図2)。GREIは複数の分子動態からこれまでにない診断情報を提供し、分子イメージングの有用性をさらに拡張する新しい核医学診断ツールです。
GREIのセンサーは高純度ゲルマニウム半導体検出器からなり、入射γ線の相互作用位置とエネルギーを高精度に測定し、コンプトン散乱の運動学を用いることによってγ線源の分布を特定できます。またGREIはエネルギー分解能に優れ、それぞれの分子プローブをγ線のエネルギーで明確に識別し画像化できます。図3では65Znが肝臓付近に、85Srが脊椎などの骨に、131Iが副腎および甲状腺付近に集積している様子を同時に捉えています。この様に複数の分子をエネルギーの異なるγ線源で標識することで、複数分子同時イメージングを実現します。